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- 2019.03.19 Tuesday
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◆聖句によせて 「平和な人には未来がある。」 詩編37篇37節
1944年、8月24日、史上最大の作戦、ノルマンディー上陸作戦が成功し、連合軍のパリ入城直前、ヒトラーは、着任早々の、コルティッツ大将のもとに、 「パリは、廃墟以外の姿で敵に渡すべきではない」といういわゆる「パリ廃墟命令」(8月23日付け総統命令)を届けました。
軍人として、彼はパリを壊滅し、民衆を虐殺することであっても、命令であれば、それを実行しなければならない。しかし、そんな理不尽な命令でも守らねばならないのか。その土壇場に、パリ駐在スウェーデン総領事ラウル・ノルドリンクが説得のために訪れます。「総統の命令を実行することは人類史的過ちだ。理性ある人間として従うべきではない!」コルティッツは苦悶しながら応えます。「わかっている。しかし、私は妻と娘を人質に取られているのだ…もし君が私の立場だったら、どうする? パリを救うために家族を見捨てられるかね…?」
二人の間で、究極の理性と理性の静かな激論が展開されます。
戦争を鼓舞し、駆り立てようとする時、どこの国もが、「家族のため、愛する人の為に」という「殺し文句」使います。ヒトラーはそのような殺し文句の天才でした。しかし、現実はただ破壊のための破壊でしかありませんでした。「パリ廃墟命令」は、その邪悪な意志そのものの現れでした。
8月25日、午後1時、いらだったヒトラーはパリ廃墟命令が実施されているか、最高司令部作戦部長アルフレート・ヨードル大将に質問した上で、「パリは燃えているか?」と3回にわたって叫んだといいます。そして、あらゆる手段でパリを灰にするよう命じました。しかし、幸いにも歴史の神は、パリを守ったのです。午後3時前、コルティッツ大将はレジスタンスの指導者に降伏し、ナチスによるパリ占領は終結します。
舞台『Diplomatie』を、名匠 フォルカー・シュレンドルフ 監督が映画化した『パリよ、永遠に』は、コルティッツ大将とノルドリンク総領事の、パリ存亡をかけた激論を、慎重に描きます。そのテーマは、次のようなことだと言われています。
「全体として邪悪な組織や、時代、属性に身を置かざるを得ない場合にあったとして、(たとえば、戦争中自分が兵士として徴兵されたような場合)、個人としてその良心を見失わず、ここぞという土壇場で理性の力を発揮することできるか、できないか。」
決して容易ではなさそうですが、人としての尊厳がかかっています。
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