◆7月の聖句によせて
「あなたがたは神に愛されている子どもです。」 エフェソの信徒への手紙5章1節
現在では広く使用されている「アイデンティ」「基本的信頼」という用語を提唱したエリク・H・エリクソンは発達心理学者で、精神分析家として知られていますが、彼はなんと大学の学位なしに、様々な学問領域を横断する基礎的な概念を結晶化させました。
そしてその影響ははかりしれません。
「あなたがたは神に愛されている子どもです。」という聖書の言葉を思い巡らしていると、エリクソンを思い出します。
幼児期に揺るぎない「基本的信頼」を形成することが人格形成上、この上なく大切だということを、聖書の民は、日本文化がいまだ文字ももたない時代から文化遺産として継承してきました。
その事の偉大さに感動します。
わたしは祖父母の時代からのキリスト者ですが、わたしの家族・親族がキリスト教信仰の継承者として成熟してゆくには、まだまだ何世代もかかると思っています。
なによりも重要なことは何なのか。どんなに厳しい試練を受けても揺るがないまことの神への基本的な信頼。どんな宝にも優る目に見えない宝を次代に受け渡してゆくことは何にもまして大切だと思っています。
ピッツバーグの一角は全米一のユダヤ人居住地だそうです。安息日にはそれとわかる衣装をまとったユダヤ人が町のここかしこに溢れ、会堂(シナゴーグ)に集まり礼拝を捧げる姿を見ることができるそうです。
ナチスによる絶滅政策(ホロコースト)によっても滅びない信仰の姿を観るとき、自ずから敬服の念が生ずるそうです。そういえばあのエリクソンもユダヤ人でした。
ユダヤ人が世界文化にどれほど多大な影響を与えてきたかを数えれば、枚挙にいとまがありません。
神の民として選ばれた人々は、ものを深く考えること、集中し、かつ切り替えて考えること、原則をもって生活をすることなど、優れた霊性、生活態度、倫理的生活を継承し続けています。
キリスト者は、この神の民から大切なものを学びつつ継承しながら、さらに自由に、さらに深く神と隣人を愛することを生涯の目的としています。
子どもたちを、いかなる逆境をも果敢に乗り越え、神と人への愛を貫く、「基本的な信頼」感が充(じゆう)溢(いつ)した人格者へと育てたい、これがキリスト教保育の目的です。