◆聖句によせて
「わたしたちは、キリストに向かって成長していきます。」
エフェソの信徒への手紙4章15節
「七歳までは夢の中」。夢のような幸福感を味わいつくすことことこそ、幼児期の真の課題です。その幸福感の蓄えことが、小学校へ行ってからの生きる力の基礎となるのです。
すぐれた人々は、豊かな環境のなかで、存分の愛情を注がれ、内から湧き出でる好奇心や冒険心のままに、時のたつのも忘れて自由に遊ぶ幼児期を経験してきています。
才能豊かな天才たちは、必ずと言ってよいほど、恵まれた自然、豊かな文化を湛える美しい風土のなかから輩出していると言われます。そのような環境のなかでこそ、自らの内面から生ずる力によって、学びとってゆくことができるのでしょう。何かをやらされるという環境のもとでは、そのような力は抑圧されてゆくばかりです。
先日、必要があって楽器店に行きました。楽器を眺めていると、「ぼくもピアノを弾いてみたいな」という思いが心のなかに湧いてきました。「ああ、この気持ちが幼い時に育まれていたらなあ」と思いました。わたしは3才のときにヴァイオリンとピアノを「習わされ」ました。悲しいことに、わたしと楽器とは不幸な出会いをしたのです、内側からわき起こる「弾いてみたい」という思いからではなく、母の「弾かせたい」という思いによって、わたしの楽器への愛は塞がれてしまいました。
練習をすれば子どものわたしでもある程度は弾けるようになります。発表会で弾いている写真がアルバムに残っています。しかし、わたしの楽器への愛は、何十年も封じられてしまいました。
こどもには、発達の特性があり、それぞれの月齢にふさわしい環境との出会いというものがあります。特に幼児期に発達する情動は、人格形成の基礎づくりです。この大切な時期に、発達特性を無視した一斉授業とか、教科学習のような小学校教育の先取りでしかない「つめこみ」をすることは百害あって一利なし。「幼稚園教育要領」を確認しておきましょう。
「幼児期における教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり,幼稚園教育は、(中略)幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行うものであることを基本とする。このため,教師は幼児との信頼関係を十分に築き,幼児と共によりよい教育環境を創造するように努めるものとする。」( 第1 幼稚園教育の基本)
人は生涯を通じて、発達、成長してゆきます。わたしたち成人もまたその成長の途上にある者なのです。子育てに焦りは禁物です。頭脳優秀でも自分のことしか考えないエゴイストにこどもを育てたくはないでしょう。心豊かで思いやり溢れ、社会に奉仕する人になってほしいのではないでしょうか。